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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)707号 判決

控訴人

名倉清一

右訴訟代理人

秋田経蔵

被控訴人

天野隆

ほか四名

被控訴人ら五名訴訟代理人

原陽三郎

主文

原判決中、控訴人の被控訴人天野に対する原判決末尾付第二目録記載の登記簿謄本の偽造文書であることの確認請求を棄却した部分を取消す。

控訴人の被控訴人天野に対する右確認を求める訴を却下する。

原判決中、その余の部分に関する本件控訴を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被控訴人桑原新太郎は昭和四九年一月二一日死亡し、これに伴つて相続人たる桑原全太郎、桑原完二郎、桑原宗彦および辻阿佐子が桑原新太郎の訴訟上の地位を承継したものであり、このことは当審提出の戸藉謄本二通および弁論の全趣旨に徴し明らかである。

二控訴人の本件訴は、原判決末尾添付第一目録記載の土地登記簿謄本(第一文書という)および同第二目録記載の土地登記簿謄本(第二文書という)がいずれも偽造文書であることの確認を求めるというものである。

しかし、民事訴訟法二二五条にいわゆる証書真否確認の訴の対象となるべき「法律関係を証する書面」とは、その記載内容から一定の権利または法律関係の存否成否が直接に証明される書面をいうものと解すべきであるところ、登記簿謄本は、その記載内容が権利関係の存否等を認定する一助となり得るものにすぎず、その記載内容から権利または法律関係の存否成否が直接に証明されるという性質の書面ではないから、「法律関係を証する書面」には該らず、証書真否確認の対象となり得ないものである。

そうすると、右書面の真否の確認を求める本件各訴は、その余の判断をまつまでもなく、すべて不適法として却下すべきものである。

三よつて、原判決中控訴人の被控訴人天野に対する第二文書の偽造文書であることの確認を求める訴の適法性を認めたうえその請求を棄却した部分は失当であるからこれを取消したうえ右訴を却下すべく、原判決中その余の部分は控訴人の被控訴人天野に対する第一文書の偽造文書であることの確認を求める訴および被控訴人らの被承継人桑原新太郎に対する控訴人の各訴について、いずれも登記簿謄本が証書真否確認の訴の対象たる文書としての適格性を有するとしたうえで、前者につき即時確定の利益を、後者につき被告適格をそれぞれ欠くとの理由で訴を却下したものであつて、却下した理由において異なる点がみられるものの、却下した結論は正当であるからこの部分に関する本件控訴は理由がなくこれを棄却すべきものである。そこで、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(岩野徹 中島一郎 桜井敏雄)

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